【思い出】


                       

たぶん


それはまだ小学生の頃


夏休みも終わりに近いある日


小さな妹を抱いた母が


突然 散歩に行こうと言い出した



何故そんなことを言い出したのか、わからない


けれど


大勢の兄弟の中で


一番母と接触の少なかった私は


嬉しくて


一緒について歩いた


何の話をしたか


何も覚えていない



ただテクテクと 歩いた


段々空が暗くなって


田んぼの中の小高い山が 黒くぼんやりと浮かんでいた



何年か前


同じ道をたどりたくて、行ってみた


しかし


何も無かった


田んぼも 山も


母と歩いた道も



そこは 家々が軒を連ねる住宅街になっていた




あの夕暮れの散歩道が


母と私をつないでいる



母は覚えていただろうか・・